研究者の評価指標(h-indexとインパクトファクター)

研究に限らず、その人の業績を客観的に評価するのは難しいことです。同じ企業内でも社員の業績評価は難しいのに、異なる施設にいる研究者同士の業績はどのように評価していけばいいのでしょうか。そもそも研究者としてキャリアを積んでいくには何を目指して成果を出していけばいいのでしょうか。

ここでは一般的に用いられている評価指標として、論文の被引用数やh-index、インパクトファクターについて説明していきます。

論文数 / 論文被引用数

研究の世界では、基本的に筆頭著者で発表した論文によって業績が評価されます。もちろん論文がすべてではないですし、論文には表せない貢献も当然あるのですが、それでもやはり成果を世間に発表してなんぼの研究の世界では論文数は最も重視されることの一つです。

そうはいっても、論文はトップレベルの一流ジャーナルの論文から質の低いジャーナルやお金さえ出せば載ってしまうハゲタカジャーナルまでピンキリです。そこで、投稿した論文数ではなく、投稿した論文が引用された数で評価する方法もあります。Googleなどの検索エンジンがウェブサイトの被リンク数を重視するのと同様で、引用された論文はそれだけ価値のあるものであるという発想です。

しかし、被引用数を増やすために自分で自分の論文を引用することもできてしまったりといろいろ問題もあるので、被引用数も絶対的な指標とは言えないのです。

h-index

論文の合計被引用数だけで評価すると引用数が100回の論文を1本だけ持っている研究者と、被引用数が10回の論文を10本持っている研究者の評価が同じになります。もちろん被引用数が100回は素晴らしいのですが、それを1本しかもっていないということはたまたまヒットを飛ばしただけでかもしれないので、コンスタントに成果を出せる研究者かといわれるとちょっと疑問かも知れません。それよりも被引用数が10回の論文を10本持っていた方が、次も同じレベルの論文を出してくれそうで期待できますよね?

そのため、コンスタントにレベルの高い論文を出している人を高く評価するための指標としてh-indexというものが考案されました。h-indexは「被引用数がh回以上である論文がh本以上あることを満たすような最大の数値」で定義されます。

詳しくは以下もご覧ください。

例えば、ある研究者が以下のようにA~Qまでの論文を出したとします。この時、被引用数の高い順番に並べ替えて1, 2, 3, … と番号を振っていきます。この番号と被引用数が一致したところがh-indexの値です。この例でいうとi-indexが9となり、「被引用数が9回以上である論文が9本以上ある」といえます。

グラフでいうと\(y=x\)との交点がh-indexとなります。

h-indexは論文数が少ない and 論文を出して間もない(=引用される機会がまだ少ない)若手は必然的に低くなり、経験を積んだ研究者ほど高くなります。さらに、論文の引用回数をカウントするデータソースによっても異なる値になってしまうという問題点があります。

また、h-indexでは被引用回数がずば抜けている論文を1本だけ書いた「一発屋」の研究者の評価は低くなりますが、そうはいってもそういう論文をかけること自体は素晴らしいことなので、やはりそれが研究者の評価のすべてとはいいがたいものがあります。例えば、h-indexで評価するとアインシュタインは6となってしまい、一流研究者どころか二流・三流の研究者と同レベルということになってしまいます。

IF (インパクトファクター)

論文数の比較ではトップジャーナルでも質の低いジャーナルでも同じ扱いになってしまいますし、論文の被引用数の比較は自己引用によって恣意的にゆがめることもできてしまいます。そこで、ジャーナルのレベルを表す指標であるインパクトファクターを用いて投稿された論文の評価、そして研究者の評価を行うこともあります。

インパクトファクターの計算方法とその意味

ある年(X年)のインパクトファクターは以下のように算出されます。

$$X年のインパクトファクター = \frac{B+D}{A+C}$$

ただし、

\begin{cases}
A:X-2年に掲載された論文数\\
B:X-2年に掲載された論文がX年に引用された延べ回数\\
C:X-1年に掲載された論文数\\
D:X-1年に掲載された論文がX年に引用された延べ回数
\end{cases}

とします。

インパクトファクターはそのジャーナルに掲載されている論文が平均でどのくらい引用されているかを評価する指標です。つまり、その論文自体を評価する指標ではなくあくまでのジャーナルの指標ですが、より良いジャーナルに掲載された論文はよい論文だと一般的に考えられているので、便宜的にインパクトファクターを論文の良し悪しの指標として使ってしまう場合も多くあります。

そして、その研究者の論文のインパクトファクターを合計して、研究者の評価指標とすることがよく行われています。いうまでもなくインパクトファクターは論文の評価指標ではなく雑誌の評価でしかなく、それを合計することに本来は意味がないはずですが、便宜的な指標としては一般的に用いられてしまっているのです。

特に大学の教授選ではインパクトファクターの合計が公募要件に含まれていたりもして、世間的には一番わかりやすい研究者の評価指標といえるでしょう。

インパクトファクターの調べ方

インパクトファクターはクラリベイト・アナリティクス(旧:トムソン・ロイター)社のオンライン学術データベースであるWeb of Scienceのデータをもとにして算出されており、Journal Citation Reportsに収録されています。

Web of ScienceやJournal Citation Reportsは大学や研究所など、クラリベイト・アナリティクス社と契約している施設でしか閲覧することができません。

大学や研究所に所属している方はJournal Citation Reportsにアクセスして、雑誌名で検索してインパクトファクターを調べましょう。

例えば5大医学雑誌の一つであるNew England Journal of Medicineのインパクトファクターを調べてみましょう。

これで、New England Journal of Medicineのインパクトファクターを含めた指標の一覧を見ることができます。

New England Journal of Medicineの2019年のインパクトファクターは74.699と分かりました。

Journal Citation Reportsにアクセスできない場合は、例えば以下のサイトからインパクトファクターの数値だけ調べることは可能です。

インパクトファクターの目安

インパクトファクターはその研究分野によっても大きく異なるので分野をまたいで比較することはあまり意味がありません。その上で、特に医療系の分野におけるインパクトファクターの目安について参考になる情報があったのでご紹介します。

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)