今行えるBNCTによるがん治療 (2020/7/28 現在)【BNCT】

BNCTは2020年6月より保険診療としての治療が開始されました。今まではあくまでも研究段階としての治療だったのがいよいよ実用段階の治療となり、今後のさらなる進化が期待されています。また、それに伴って昨年度まで行われてきた京都大学複合原子力科学研究所の原子炉を用いたBNCTは終了しました。

ここでは、今の段階でBNCTを用いて実施できるがん治療について紹介していきます。

保険診療としてのBNCT

BNCTが保険適用となる条件は「薬事承認された医療機器及び医薬品を用いて、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌の患者に対して実施した場合」であり、現在薬事承認された医療機器としてのBNCTの治療装置は住友重機械工業製のものだけです。これを導入している医療機関は以下の2施設です。

また、BNCTの適用疾患は「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に限定されることにも注意してください。再発悪性神経膠腫を適応疾患に追加する承認申請も計画されているので、今後は徐々に適応拡大していくものと期待されます。

保険診療としてのBNCTについてはこちらの記事もご覧ください。

関西BNCT共同医療センターの外観(ホームページより)

臨床試験としてのBNCT

BNCTの保険適用は住友製の加速器を用いた、切除不能または再発頭頸部癌に対する治療のみですが、他疾患への保険適用の拡大や住友製以外の加速器の薬事承認を目指して臨床試験が進められています。

BNCTの適用拡大を目指した臨床試験

すでに薬事承認された治療装置・薬剤を用いた臨床試験です。

再発高悪性度髄膜腫(WHOグレード2、3)患者を対象としたSPM-011・BNCT30を用いたホウ素中性子捕捉療法治療(BNCT)の臨床効果に関する第II相臨床試験

新たな治療装置の承認を目指した臨床試験

住友製以外の加速器の薬事承認を目指した臨床試験です。特に、国立がん研究中央病院では、CICS社製の加速器BNCTシステムが導入されており、2019年12月よりその医療機器としての承認を得るための治験が行われています。

悪性黒色腫と血管肉腫を対象としたCICS-1とSPM-011を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の第1相臨床試験(国立がん研究センター中央病院)

  • 臨床研究情報ポータルサイト
  • CICS社製の新しい加速器BNCTシステムを用いて、その医療機器としての承認を得るための治験です。
  • 2019年11月より開始されて、現在は第1相臨床試験の段階です。

まとめ

頭頸部癌に対する加速器BNCTシステムを用いた保険診療が開始されたことと、従来行われてきた京大原子炉を用いたBNCTが終了したことで、BNCTは大きなターニングポイントを迎えています。今後は「適応拡大」と「新たな治療装置・薬剤の薬事承認」を目指すとともに、保険診療としての診療実績を積み重ねて、新たながん治療のモダリティーとして確立していくことが求められていきます。

今後もますますBNCTから目が離せなくなりますね!

注意
  • ここでの記載内容に誤り等あればご指摘ください。
  • この記事の内容に伴ういかなる損害やトラブルの責任は一切負いかねますので予めご了承ください。
  • 最新情報は必ずご自身でお問い合わせください。

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)